(2023.2.18更新)
大阪歴史博物館では、令和5年1月25日(水)から3月21日(火・祝)まで、8階特集展示室において、特集展示「銀行重役のコレクション-京・大坂の近世絵画を中心に-」を開催します。
近代の大阪は、日本を代表する商工業都市として財閥や大企業の本拠地となりました。それらを率いた人々のうちには日本美術の愛好者や収集家がいました。大阪にあった山口銀行などを経営した山口財閥の山口吉郎兵衛もそのひとりで、重役として彼を支えた人物に西田永助がいます。
当館では、その西田家に伝来した絵画を収蔵しており、近代大阪における豊かな暮らしを彩った絵画がどのようなものであったのかを知ることができます。その大半は、江戸時代後期から明治時代にかけての大坂(阪)や京都で活躍した画家の作品で、四季折々の情景を描いた花鳥画です。作者は大坂の森一鳳や西山完瑛、京都の松村景文や森寛斎ら、写実を基本にした穏やかな自然物の描写を得意とした人たちです。
西田家旧蔵品の絵画を通じて、当時の人々の絵画に対する好み、また優れた技量を持ちながらも、今では顧みられることが少ない画家について知っていただく機会となれば幸いです。
解説リーフレット
解説リーフレット(PDF)はこちらよりダウンロードできます。
主な展示資料
展示資料点数:約20点 |
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- 寿老人図
- 森一鳳筆
江戸時代~明治時代(19世紀)
大阪歴史博物館蔵(前田美希氏寄贈)
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江戸時代末期から明治時代初頭にかけての大坂で名高かった森一鳳(1798~1871)の描く寿老人図です。白鹿を従え、姿良く立つ寿老人は神々しく、人々の福寿に対する願いを受け止めたのでしょう。背景には何も描かず、かつ適度な余白を取ることにより、鑑賞者の目を寿老人に集中させる優れた構図となっています。それとともに、淀みがなく、美しくひかれた衣服の線などからも一鳳の高い技量を知ることができます。
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- 月下兎図
- 西山完瑛筆
明治23年(1890)
大阪歴史博物館蔵(前田美希氏寄贈)
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大きな月の下に、二羽の白と黒の兎がいます。丸々とした愛らしい姿に描かれており、この姿は江戸時代の絵画に新風を吹き込んだ円山応挙の作品に近い表現です。本作品の筆者は江戸時代末期から明治時代前期にかけての大阪で活躍した西山完瑛(1834~1897)です。彼は四条派の絵師であった父の芳園に絵を学び、儒学も修めて絵画のみならず文学にも通じていました。本図は寅年の年11月の作と記されていますので、翌年の卯年のために描かれたのでしょう。
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- 孫悟空図
- 大原呑響筆
江戸時代(18~19世紀)
大阪歴史博物館蔵(前田美希氏寄贈)
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陸奥出身の大原呑響(1762~1810)は、漢学をはじめとした学問や芸術にも通じ、江戸や京都、大坂へ出て様々な文化人たちと交わりを持ちました。それとともに海防にも関心を寄せ、蝦夷の松前藩主に招かれ北方の警備や治世への意見を聞かれることもありました。書画に優れ、晩年には「千詩千画会」という1000枚の自筆の絵とそれにちなんだ1000枚の自作の詩と書を一堂に展覧した会を開くなど旺盛な活動を見せています。本図は『西遊記』で知られる孫悟空を描いた作品です。吐いた息をよく見ると、口元では点だったものが、次第に姿を現わし、頭上に至る頃には猿の姿に変化しています。孫悟空お得意の分身の術を披露している場面です。
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