

第1章 都市の力
アジア、そして世界に開かれた日本の玄関口としての役割を果たしてきた大阪。その立地の重要性から蓄積されてきた都市の「力」に注目します。
金箔桐文方形飾瓦
豊臣時代(16世紀末) 大阪歴史博物館保管

第2章 風土の力
大阪という土地の自然環境や立地条件、そこで積み重ねられた歴史や培われた文化が、多くの「宝」を生み出しました。
京屋唐箕
嘉永4年(1851)
大阪歴史博物館蔵(平野区画整理記念館寄贈)

唐箕は風力によって穀物と塵芥を選別する農具で、本資料は大阪市平野区平野上町で使用されていたものです。「大坂農人橋 京屋七兵衛」「嘉永四年」の墨書があり、大坂農人橋(中央区)の農具商・京屋製とわかります。京屋の唐箕は西日本で用いられた唐箕の基本形と考えられ、近畿を中心に多く残っていますが、嘉永期の紀年銘をもつものは現状で唯一です。大坂の農具職人の技術力が農業に革新をもたらし、各地の風土を育みました。
第3章 芸術の力
大阪では古代よりさまざまな芸術が生み出され、都市と人びとに活力をもたらしてきました。
龍自在置物 穐山竹林斎作
大正12年(1923)
大阪歴史博物館蔵(西條敏弘氏寄贈)

穐山竹林斎(1891~1937)は大阪・粉浜の彫刻家です。自在置物とは、龍や海老などの関節を自在に動かせる細工を施した工芸品です。堅牢な金属で作られているのと違い、同じ動きを木製品で実現するには構造上の工夫が必要でしたが、竹林斎は金属のワイヤーを内部に仕込む創意工夫によりこの難題を解決しました。竹林斎の優れた彫刻技術に大阪人らしい柔軟な工夫が加えられることで芸術に昇華された逸品です。
第4章 市民の力
大阪という都市の文化を創りあげたのは、まさに大阪に暮らし、大阪を愛した人びとでした。
屈折式望遠鏡
江戸時代後期(19世紀)
大阪歴史博物館蔵(羽間平安氏寄贈)

大坂の天文学者間重富(1756~1816)の息子・重新(1786~1838)が使った天体観測用望遠鏡です。文政6年(1823)にオランダから幕府に献上され、大坂で御用測量にあたっていた重新に貸し下げられました。間重富は大坂長堀の裕福な商家に生まれ、我が国で初めて西洋天文学による寛政暦法を完成させ、幕府の改暦に貢献しました。間家の観測資料は幕府天文方の資料が限られるなかで、江戸後期の天体測量資料として大変貴重です。
第5章 未来への力
人びとは技術と情熱を持って、当時の文化をさまざまな形で残してきました。未来への希望、特にこれからを生きる子どもたちに託した想いに触れる「宝」を紹介します。
「世界の記憶」登録品
朝鮮通信使御楼船図屏風
江戸時代
大阪歴史博物館蔵(辛基秀コレクション)

国際交流の玄関口・大阪は、江戸時代には幕府直轄都市として、正式な外交使節である朝鮮通信使を迎えました。一行は都市の賑わいや彼らを乗せて淀川を進む豪華絢爛な川御座船に強い印象を受けたと書き遺しています。本図は一行のうち従事官を乗せた中土佐丸です。当館所蔵の朝鮮通信使資料は生涯を通信使研究に捧げた辛基秀氏の収集品で、隣国同士の友好関係を示す貴重な歴史資料として世界史的にも注目される資料です。
五七桐文に金箔をほどこした飾り瓦です。昭和46年(1971)に中央区森の宮遺跡の発掘調査で出土しました。出土した場所はJR森ノ宮駅の西側にあたり、大坂城内に存在した武家屋敷の跡地と考えられています。豊臣政権に従った全国の大名は大坂城内やその周辺に屋敷を設け、その屋根はきらびやかな金箔瓦で飾られていました。桐の文様は豊臣氏ゆかりのもので、屋敷の主が豊臣政権と深いつながりを持つことを示しています。豊臣時代に形作られた城下町が、現代の都市大阪の基礎となりました。