
水族図譜(すいぞくずふ)
五冊 堀田龍之助編・森関山(もりかんざん)筆 明治13年 和歌山市立博物館蔵

『水族図譜』(第一冊)より「チタヒ」
湖魚奇観(こぎょきかん)
(藤居重啓(ふじいじゅうけい)撰 湖魚図証ほか貼込屏風)
六曲一双 19世紀 本館蔵(堀田コレクション)

右隻
琵琶湖の魚や生き物とその説明を述べた図画が貼りつけられた屏風で、彦根藩士の藤居重啓(生没年不詳)によって制作されたと見られます。また、生物画以外にも、近江の文人らがそれぞれの画題に応じて詠じた漢詩などを多数貼り交ぜており、地方文人の教養と博物学の情報が交わった興味深い作品です。
同じく藤居重啓撰の由来をもつ類似名作品(冊子・巻子)が国内外の機関で所蔵されていますが、多くは落款や年記を欠く写本であり、また文人らの画賛もないことから、これらをもつ当屏風の希少性が伺えます。
貝類標本
一括 19世紀 大阪市立自然史博物館蔵

標本の一部
昭和45年(1970)に堀田家より寄贈された堀田コレクションのうち、ここにあげた貝類標本はその後大阪市立自然史博物館に移管され、現在同館にて所蔵されています。
標本箱は全部で20箱程度にのぼり、貝類と鉱物が含まれています。特に貝類の標本には堀田龍之助の筆跡と思われるメモがつけられていました。大阪歴史博物館が所蔵する堀田コレクションの中には貝類の図が描かれた冊子も含まれていますが、堀田龍之助の博物学的志向が、図画に留まらずに、実物標本を収集するところにまで及んでいたことを示す貴重な資料です。
『水族図譜』は、紀州藩の博物学者・畔田翠山が著した『水族志』(すいぞくし)に龍之助らがあらたに彩色図を加えて編集したものです。『水族志』は明治17年には田中芳男(たなかよしお)らによって翻刻出版されました。堀田コレクションには、この『水族志』刊行に関係する田中から堀田にあてた書簡も残されています。