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川瀬巴水 旅と郷愁の風景
(2024.7.12更新)
展示資料

〈第1章〉 版画家・巴水、ふるさと東京と旅みやげ

鏑木かぶらき清方きよかた門下となって美人画を描いていた巴水は、やがて風景画にも興味を持ち、新版画を提唱する版元の渡邊庄三郎と出会います。庄三郎とともに版画家として歩み出した初期から関東大震災発生前までの作品を紹介します。『旅みやげ第一集』、『旅みやげ第二集』、『東京十二題』、『東京十二ヶ月』などの風景画シリーズが制作されています。

《木場の夕暮》 

東京十二題 1920(大正9)年秋
版元・渡邊木版美術画舗蔵

《木場の夕暮》 東京十二題

《月嶋の渡舟場》 

東京十二ヶ月 1921(大正10)年10月
版元・渡邊木版美術画舗蔵

《月嶋の渡舟場》 東京十二ヶ月

〈第2章〉 「旅情詩人」巴水、名声の確立とスランプ

関東大震災(1923年)によって、巴水は写生帖など画業の成果のすべてを失います。店の再建に取り掛かった庄三郎は、巴水の背中を押し、生涯最長となる旅に送り出し、新たな創作につなげていきます。震災前後で、巴水の新版画の画風は、鮮やかで、明るい色彩を強調し、より写実的な筆致へと変化し、1930年代にかけて巴水の国内外で評価は高まっていきました。巴水の代表作、《芝増上寺》、《馬込の月》を含む『東京二十景』はこの時期に制作され、震災後の新版画を象徴する存在になっています。

《芝増上寺》 

東京二十景 1925(大正14)年
版元・渡邊木版美術画舗蔵

《芝増上寺》 東京二十景

馬込まごめの月》 

東京二十景 1930(昭和5)年
版元・渡邊木版美術画舗蔵

《<ruby>馬込<rt>まごめ</rt></ruby>の月》 東京二十景

1933(昭和8)年、巴水は伊勢から奈良、紀州、京都、大阪を巡る2週間余りの旅をします。これらの旅の収穫をまとめて版行された『日本風景集Ⅱ 関西篇』には大阪の風景も含まれています。

《大坂宗右衛門町の夕》 

日本風景集Ⅱ 関西篇 1933(昭和8)年4月
版元・渡邊木版美術画舗蔵

《大坂宗右衛門町の夕》 日本風景集Ⅱ 関西篇

《大坂道頓堀の朝》 

日本風景集Ⅱ 関西篇 1933(昭和8)年4月
版元・渡邊木版美術画舗蔵

《大坂道頓堀の朝》 日本風景集Ⅱ 関西篇

〈第3章〉 巴水、新境地を開拓、円熟期へ

高い名声を得ながらも、作風のマンネリ化を感じ葛藤する巴水は、画家仲間の誘いで朝鮮半島への旅に出ます。そこで目にした異国の風景・風俗の新鮮さに魅了され制作された連作では、精緻な描写に、震災前の思い切った構図が加わった新境地を開拓していきます。戦後、GHQ関係者からの肉筆画制作の依頼や、アメリカの日本版画展への出品など、巴水の作品は海外でも人気がありました。

《“The Japan Trade Monthly”表紙(No.68)》

The Japan Trade Monthly 1950(昭和25)年
版元・渡邊木版美術画舗蔵

《“The Japan Trade Monthly”表紙(No.68)》

近年では、アップル・コンピュータの共同創業者であるスティーブ・ジョブズが、日本の新版画を愛し、特に川瀬巴水を好んでコレクションしていました。

《西伊豆木負きしょう

1937(昭和12)年6月
版元・渡邊木版美術画舗蔵

《西伊豆<ruby>木負<rt>きしょう</rt></ruby>》
解説

新版画とは・・・
大正から昭和にかけて興隆した多色摺木版画です。浮世絵の伝統技術を継承しつつも新しい表現を取り入れ、絵師、彫師、摺師、版元による協業で制作されました。