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小泉八雲―怪談とフォークロリストのまなざし―
(2025.12.19更新)
展示資料

ゴンボ・ゼーブ

明治18年(1885) 松江市立中央図書館蔵

ゴンボ・ゼーブ

 ルイジアナ、ハイチ、マルティニーク、トリニダード、フランス領ギアナ、モーリシャスというクレオール文化圏のことわざ辞典で、明治17年(1884)のニューオリンズ万博開幕に合わせて企画されました。「ゴンボ・ゼーブ」とはルイジアナで愛されるハーブ入りガンボ(スープ料理)の名で、混淆こんこう的なクレオール文化を、種々の具材を煮込んで作るガンボになぞらえたと思われます。本書の序文には「いま、伝承を書き留めておかなければ」と、民俗研究の嚆矢こうしとなるという強い意志が語られます。

※ここでのクレオールとは、北米南部・中南米におけるヨーロッパ、アフリカ、先住民などの混淆文化を指します。


怪談

明治37年(1904) 松江市立中央図書館蔵

怪談

 八雲は、昔話や伝説、神話などの原典を語りなおし、物語を生み出す「再話文学」を多く残しています。『怪談』は、小泉八雲の晩年の代表作といえる再話作品集です。平家の亡霊に魅入られた琵琶の名手・芳一ほういちを巡る惨劇「耳なし芳一の話」や、江戸・紀ノ国坂でのっぺらぼうに遭遇する「むじな」など、今日まで知られる怪談話を多数収録しています。八雲は、妻セツの語る物語を聞き、小説を編みました。本展では、『怪談』をはじめとする再話文学の原典となった資料もあわせて展示いたします。


小泉八雲秘稿画本 妖魔詩話ようましわ

昭和9年(1934) 島根県立古代出雲歴史博物館蔵

小泉八雲秘稿画本妖魔詩話
雪女(部分) (展示期間:4月11日~5月11日)
小泉八雲秘稿画本妖魔詩話
船幽霊(部分) (展示期間:5月13日~6月8日)

 八雲の没後30年を記念し、長男の一雄が遺稿をもとに500部限定で刊行しました。本書の序文によると、セツが購入した『狂歌百物語』を目にした八雲は「コウ面白イ!貴女忙シ無イノ時、是非読ム下サレ、私翻訳シマセウ」と喜んだそうです。八雲の描く妖怪たちは、『狂歌百物語』の挿絵とは一線を画し、独特のイメージで表現されています。たとえば、『怪談』で美女に化けて現れるとされる雪女はどこか洋風の姿で描かれます。また、おけ柄杓ひしゃくで水をすくい入れ、船を沈める船幽霊ふなゆうれいは、まるで死神のようです。

※会期中、一部ページのめくり替えをいたします。


ヘルン像(右横顔)小泉清こいずみきよし

昭和25年(1950) 小泉八雲記念館蔵

長久信折紙

 八雲の三男・小泉清(1899~1962)は、明治45年(1912)に早稲田中学に入学後、會津八一あいづやいちに画才を見出されます。大正8年(1919)、佐伯祐三や前田寛治らも所属していた東京美術学校(現:東京藝術大学美術学部)に進学、画家を志します。その後、フォービズム(野獣派)の画風を追求しました。この絵は、清が描いた八雲の右横顔です。八雲は少年時代の事故で左目を失明しており、写真にはほぼ右側の横顔を収め、頑なに左目を隠しました。清は、八雲が隠し続けた左横顔も描いています。本展では、両作品あわせて出品いたします。